思い出の利用者さん

エッセイ

私は時々、今まで仕事で関わってきた利用者さんや子ども達のことを思い出します。

もしかしたら、自分の亡くなった祖父母より多く思い出していると思います。

利用者のYさん

最近よく思い出すのはYさん。

Yさんは、私が長野の障害者支援施設で働いていた時の利用者さんです。

Yさんは生まれつき重度の障害を持っていました。

ずっと家で家族にみてもらいながら暮らしていましたが、両親が高齢になり家ではみれないということで園にやって来ました。

Yさんは園の生活が嫌で、発する言葉は『いや』がほとんど。他には『うん』・・・くらいでした。

声を出して泣くことも多かったです。

でも、たまには笑ってくれることもありました。

Yさんの「ありがとう」

ある日、地元の小学生が歌をうたいにやって来ました。

曲は、『いのちの歌』

子ども達の透き通ったアカペラに、涙する職員や利用者もいました。

最後にグループに分かれて小学生と利用者さんが話す機会をつくると、Yさんは小学生に『ありがとう』と言いました。

園で聞いた初めてのYさんの『ありがとう』でした。

私は、びっくりして、感動して、涙が止まらなくて、必死になって隠してました。

子どもの力ってすごいなぁ・・・

それに、素直なYさんもすごいなぁ・・・

Yさんの最期

その数年後、Yさんは亡くなりました。

亡くなる数日前、私はYさんにたくさん話しかけました。

でも、何を言っても何の言葉も返ってこない。明らかに今までと違う。

もしかしてって思い、

『もう、あっちに行きたいの?』

と聞くと、『うん』って言葉が返ってきました。

私はかなりの衝撃を受け、頭の中が真っ白になり、しばらく沈黙が続きました。

「Yさん、今までありがとう。」

私が言えた言葉はそれだけでした。

ありがとうYさん

Yさんは園で、たくさんの『いや』と時々の『うん』、そして1回の『ありがとう』を発しただけですが、私にホントに多くのことを残してくれました。

『ありがとうYさん』

私もYさんのように真っ直ぐ生きていきたいと思う。

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